ニコニコ生放送の『田原総一朗 談論爆発!』に出演した楽天の三木谷浩史会長兼社長 楽天の三木谷浩史会長兼社長は2011年6月30日ニコニコ生放送の『田原総一朗 談論爆発!』に出演した。経団連を退会し、その発言に注目が集まる三木谷氏は、ピンクのTシャツに薄い青のダンガリーシャツを重ね着、そして白いパンツというカジュアルないでたち。あたかも"脱・経団連"のイメージで登場した。その三木谷氏に対し、司会の田原氏は東日本大震災後の楽天ビジネスの影響などについて訊きながら、先日収監された堀江貴文氏を引き合いに出し、「検察が狙っているのは堀江、孫、三木谷だと思う」と注意を促した。

 以下、番組での三木谷氏と田原氏のやりとりを全文、書き起こして紹介する。

■震災後、ネットの活用が増加

田原総一朗(以下、田原): 3月11日東日本大震災が起きた。これを三木谷さんはどうとらえているか。商売や仕事、これからの日本の将来について。

三木谷浩史氏(以下、三木谷): 本当に亡くなられた方、被害に遭われた方がたくさんいらっしゃって、大変なことになった。だが逆にとらえれば、日本が変わるいいチャンスじゃないかと思っているし、ますます家庭の中でのインターネットの重要性も認識されてきた。また日本の駄目なところが浮き彫りになったところもある。一方で、日本人の優しさとか友情とか良いところも浮き彫りになって、世界にもアピールできたし、いろんなことが起こったと思う。

田原: 三木谷さんの楽天イーグルスは仙台だ。地元だが、ダメージを受けているか。

三木谷: 残念ながら今の成績がちょっと・・・。もうちょっと頑張らないと。

田原: なんでこんなに調子悪いの? まさか地震のせいではないだろう。

三木谷: 地震でかなり(の間)ホームに帰れなくて、アウェイが続いた影響はある。そういう意味では今後、活躍してくれるのではないかと期待している。

田原: 地震で「自粛!」なんてこともあったりしたが、三木谷さんの楽天は影響を受けているか。

三木谷: 一瞬、いくつかのビジネスにおいては影響を受けた。例えば楽天トラベルであったり、楽天市場も一時出荷できなかったり。出店者さんが実際に営業できないということはあったが、逆に今この時点になっては、むしろインターネットを今後活用していこうとか、あるいはインターネットでものを調達しようとか、そういう動きがより活発化された。

田原: 活発化されたか。

三木谷: インターネットの使い方が、ショッピングとかトラベルだけじゃなくて、全体的にもっと活発になったんじゃないかと思う。

田原: 現に、地震・津波で電気が停電になった。ツイッターなんかが大活躍した。インターネットが。

三木谷: もともと大災害であったり、あるいは極論を言うと核戦争が起こっても生き残るように設計されたのがインターネットだから。

田原: アメリカでもともと核戦争が起こったときに生き残るための?

三木谷: 核戦争だけではないかもしれないが、いろいろな大災害が起こったときに、天変地異が起こってもつながる、コミュニケーションできる。そういう思想のもとにデザインされている。だから、こういう非常時には極めて強い。

田原: 僕も携帯でインターネットには通じた。なるほど。ところで例えば去年、今年と、売上と言わないで「流通総額」と言うそうだが、どのくらい伸びたか。

三木谷: 今は20パーセントくらい。震災前は16くらいだったが、(現在は)22、3パーセント。

田原: 震災前より震災後のほうが伸びている?

三木谷: 夏が、早く暑くなってきたとか、今年はやはり省エネで、例えば扇風機を買おうとか、そういういろんなニーズがあるとは思う。

田原: 地震後、災害後のほうが伸びているというのはすごい。

三木谷: 結果的に。あとは東北の方が復興で新しい家具を買わなくてはいけないとか、あるいは家にいて買いたいとか、そういう需要が非常に大きくなったし、ある意味、少し東北の方々の生活パターンというのが、もしかしたら変わったのではないかという感じがする。

田原: パターンが変わった。どういうふうに変わった?

三木谷: ネットで買ってしまおうと。

田原: そっちへね。じゃあ、むしろわが世が来たという感じだ。

三木谷: そんなことはない。むしろ家がなくなっただけではなく、お店も津波で持っていかれて、資金的に考えてもネットで販売するしかないとか。あるいは農家の方も、風評被害があるからネットで販売しなくてはいけない。どうやってネットを活用するかということが、良くも悪くも最終選択肢になっているという方や企業も多い。

田原: 今までネットなんて考えもしなかった人たちが、否応なく今度の東日本大震災でネットの効用、ネットのメリット、強み、これを考えざるを得なくなったと。

■TBSと組めず、百度と組んだ理由

田原総一朗氏田原: ところで少し前だが、三木谷さんはTBSと組もうとした。そうしたらTBSが拒否して、あのとき三木谷さんは世の中からさんざん悪口を言われた。

三木谷: そんなこともあった(笑)。

田原: ところがTBSは結局駄目で、三木谷さんは中国の百度(バイドゥ)と組んだ。百度というのはGoogleみたいなもの。なぜ百度と組もうとしたのか。

三木谷: ひとつは、中国でビジネスをするためには、いろんな意味で日本とは違うから、ローカルなパートナーが必要であると。例えば台湾では、流通系の企業と組んでいる。中国ではその流通系の企業と組むのか、あるいはインターネットの――われわれはトラフィックと言うが――トラフィックを持っているところと組むのか。まあいろいろと検討した結果、やはりトラフィックを持っている百度さんと組むのがいいのかなと。インターネットショッピングのノウハウはわれわれが出す。それからお客さんを引っぱってくるのは百度の力を借りる。これが一番いいコンビネーションということだと思う。

田原: 日本でTBSと組もうとしたのも、それと似たところがあると思うが。

三木谷: そう。サーチエンジンとテレビとでは、やり方がだいぶ変わると思うけれど。しかしながら、テレビというのはある意味、強力なトラフィックを持っている。それとインターネットを組み合わせれば、新しいビジネスモデルができるのではないかということで、自分としては結構忍耐強く提案したつもりだったが。

田原: なんでTBSは三木谷さんを嫌ったのか。

三木谷: うーん、基本的にTBSというよりも、業界全体として保守的な考え方が強いのではないか。

■検察が狙っているのは堀江、孫、三木谷!?

田原: ちょっと唐突で申し訳ないが、ちょうど三木谷さんが楽天イーグルスを作ったときに、堀江貴文という男がいて、彼は近鉄バファローズを買収したいと思った。三木谷さんや孫(正義)さんは成功して、堀江さんは失敗した。いま堀江さんは、なんと監獄に入っちゃった。三木谷さんの見る堀江さんはどういう――なんで失敗したんだろう?

三木谷: 僕は堀江さんは非常に志の高い人だと思うし、法律論については専門家でないのでコメントをする立場にはないが、正直言って過去の事例から見て、非常に厳しい判決だったのではないか、というふうには思う。

田原: 僕は本当はこういうことを言っちゃいけないんだけど、あえて三木谷さんがいるから言いたい。検察が狙っているのは、堀江、孫、三木谷だと思う。

三木谷: そうですか、気をつけます(笑)。

田原: グーンと、のし上がったところは。なんで堀江さんはやられたの?

三木谷: 狙われたとか何とかというのは、私はよく分からないが、まあ、あの・・・分からない。

田原: 三木谷さんは当然、やっぱり狙われると思うが、何に気をつけているか。

三木谷: 気を付けているというか、ひとつはやはり法令遵守。これは絶対にやらなくちゃいけない。

田原: 危ないことはしない。

三木谷: 危ないことはしないというか、法律に反することはやらないということ。もうひとつは、やはり株主に対してもお客さんに対しても、フェアであるというか。僕はいつも「品性高潔」と言っている。倫理観が重要だと。例えば株価が上がればいいとかいうようなことではなく、すべてにおいてフェアであることが大切ではないかと。

田原: フェアとは、どういうことか。

三木谷: 例えばディスクロージャー(情報公開)に関してもやはり隠さない、駄目なことはね。もうそれは積極的にやっていく。若干、ライブドアさんの場合は株価重視というところがあったのではないか。

田原: あった。時価総額をいかに上げるか。

三木谷: 企業の収益のバロメーターは時価総額だと思うから、テクニカルなことで株価を上げようというのは、やはり、あまりよくないのではないかと思う。

楽天・三木谷社長×田原総一朗(2) サミットの場でも感じた「ガラパゴス日本」
http://news.nicovideo.jp/watch/nw81772

(岩本義和、大住有丹羽一臣、西川真帆、伊川佐保子)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 番組冒頭から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv54308973?po=news&ref=news#05:04

ニコニコ生放送の『田原総一朗 談論爆発!』に出演した楽天の三木谷浩史会長兼社長