国民の話題を総ざらいした、連続テレビ小説あまちゃん』。そのヒロインを見事に務め切った能年玲奈ちゃんだが、ある一点について視聴者からこんな声が上がっているのをご存じだろうか。

「顔はかわいいけど、姿勢が……かなりの猫背だよね」

そう。その一点とは“猫背”。

「地味で暗くて向上心も協調性も存在感も個性も華もない」というアキのキャラを表現するための演技?かと思いきや、実は、本人のブログでも猫背に悩んでいる旨が書かれているのだ……。

ただ、能年ちゃんはかわいく、将来有望な女優だからまだよしとして、一般の男性が猫背で姿勢が悪ければ、このように周りからの評価は下がることは間違いなし。陰湿オーラを漂わせないよう、猫背は急いで治すべし!なのである。

■自己流で治すと猫背は悪化する?

今回、猫背を矯正しようと決意したのは、週プレ編集部の中でも群を抜いて背中が湾曲した190cmの高身長編集・トダ。早速訪れたのは、2万人以上の猫背を診療し『猫背は自分で直すな』などの著作がある猫背矯正マイスター・小林篤史先生の猫背治療院、V-Style。

小林「身長が高いので、小さい頃からいろいろ不便があったのでは? 猫背は日々の生活のなかで受けた負荷が積み重なってだんだんと進行していく生活習慣病で、その第一歩は幼稚園時代からすでに始まっています。その頃に剣道やバレエを習わない限り、正しい姿勢は教えてもらえないので、実は猫背にならずに成長するのは難しいんですよ」

トダ「はぁ。実は過去に猫背を指摘されて、猫背矯正コルセットで改善を試みたんですが……」

小林「それはダメですね! 自分で治そうとしても悪化するだけ。猫背にはタイプがあり、自分に合っていない矯正法は危険です。かけるべきでない部分に力をかけるのは矯正でなく“強制”です。現に、続かなかったでしょう?」

トダ「はい……。痛くて痛くて」

小林「そうなんです。骨格がさらにゆがむ上、ストレスにより筋肉が硬くなってしまいます。また、背筋を鍛えれば猫背は治るというような説もありますが、これも一概に正しいとは言えません。長年身についた姿勢のまま筋肉を鍛えても、姿勢の矯正にはつながらないのです」



トダ「でも、放っておくわけにもいかずですね……。あまちゃんもですね……。はい」

小林「確かに、猫背は放っておくと肩こりや腰痛・頭痛はもちろん、内臓にも負担がかかり消化不良や呼吸器疾患などの症状も引き起こします。本当は専門家の付き添いのもとで一緒に矯正していくことが理想なのですが、それができない方のために今回は家庭で行なえるストレッチを教えますね。もちろんあらゆるタイプの猫背に行なって問題ない方法です!」

トダ「ぜひに!」

小林「まず、猫背矯正に必要なのは背筋を鍛えることでなく、腹筋、横隔膜、胸筋などの体の前面の筋肉を柔らかくすることが大前提です。その最も効果的な方法は、(1)まず、曲がっている背骨の位置に座布団バスタオルを敷いて、あおむけに寝てください。これによって背筋のカーブを伸ばします。

(2)そのままバンザイをして、2、3分キープしていてください。腹筋や横隔膜を伸ばすことで、両肩を前方に引っ張る力を弱めます。さぁ、立ち上がってください」

トダ「ぬおっ。確かに視界が変わった……!」

小林「これを一日1回、寝る前に行なうだけでかなり効果があると思いますよ。できればスプリングのあるベッドでなく、畳や床で行なってください。あとは、胸筋をじっくりマッサージしたり、耳の後ろあたりから延びる首の筋肉をほぐすことも効果的です」





■猫背は心とも深い関係がある!

キーポイントが「体の前面の筋肉」であることはわかったが、実はこんな説も。猫背の原因は精神的なものにあるというのだ! いいだ整骨院の院長・原幸夫先生はこう話す。

「猫背の方の中には、小学生の頃に勉強ができなかった、コミュニケーションがうまくとれなかったなどの経験による内面的なコンプレックスをお持ちの方が非常に多いですね。大人になってからも目立たぬよう体を小さく丸めた姿勢を取ってしまっているんです。あとは、身長が高いなどの外面コンプレックスもその因子です」

言われてみれば、トダは見事に根っからの内気人間。コンプレックスの塊であるトダがその精神矯正から猫背を治そうと、次に相談をしたのは『ストレスをすっきり消し去る71の技術』の著者でメンタルトレーナーの加藤史子氏。

加藤「マンガの登場人物が背中を丸め肩を落として描かれていたら、誰でもその人物が落ち込んでいるとわかりますよね? 人が落ち込むとそのような姿勢になることを誰もが自らの経験を通して知っているからです。このように、心と姿勢は密接に関係しているんです」



トダ「心を元気にすることで猫背が治ることもあるんですか?」

加藤はい。だって、背中を丸めて下を向いた状態でポジティブなことってなかなか考えられないでしょう? 逆に言えば、背中を伸ばして斜め上を向いた状態でネガティブなことは考えられないんです。つまり、ポジティブなことを考えれば、自然と姿勢も良くなるものなんですね」

トダ「なるほど。でも、前向きな発想をする方法がわかりません」

加藤「私がよくネガティブな方にアドバイスしているのは“心の声をあらかじめ準備しておきなさい”ということ。何かいやなことがあったときに『大丈夫、なんとかなるさ』『いい経験ができた』が口癖として出てくるよう、日頃から練習しておくんです。だんだんとポジティブに考えるのが心のクセとなり、姿勢が改善されますよ」

トダ「うーむ。ポジティブシンキング……考えてみますか」

ほかにも、前出の原先生からはこんな方法も。

「自律神経を落ち着かせて、姿勢を改善する“自律訓練法”を取り入れることもあります。やり方は、静かな部屋のベッドであおむけになって寝て、軽く目を閉じる。頭の中でイメージしながら『手足が重たい』『手足が温かい』と繰り返していると自己催眠がかかり、自律神経が落ち着きます。ストレス緩和や抑うつ、不安軽減などの効果があり、結果的に姿勢が良くなります。ただ、正しく行なわないと副作用が表れるので、最初は専門家の指導を受けてくださいね」

ただ、やみくもに整体しようとするよりも中と外の両面からの矯正が猫背には最も効果的なようだ。

●小林篤史(こばやしあつし



猫背治療院V-Style院長。ビオラ整骨院グループ代表。一般社団法人日本施術マイスター養成協会代表理事。V-Styleでの施術は「持続する猫背矯正」として、猫背で悩んでいた自身が発案した



首が前傾し、背中が曲がっている猫背の典型姿勢。さまざまな弊害があるので、治療することがベスト