沖縄で大人気の特撮ヒーロー番組「琉神マブヤー」。ニライカナイ(沖縄の理想郷)からやって来た正義のヒーロー・琉神マブヤーが、沖縄の伝統文化を司る9つのマブイストーン(マブイは「魂」の意)を巡って、悪の軍団マジムンと戦うというストーリーで、子供たちに絶大な人気を誇る。タレントの山田親太朗さんとDA PUMPのISSAさんが主演する劇場版「琉神マブヤー THE MOVIE 七つのマブイ」も全国公開予定だ。2011年5月15日放送 の「ニコ生ノンフィクション論沖縄スペシャル『琉神マブヤーの正義と沖縄の未来を考える』」では、マブヤーの産みの親である、畠中敏成氏と玉城満氏がその魅力について語った。
マブヤーの人気の秘訣は、地域への焦点の絞り込みだ。畠中氏は、「大手だと100億円のビジネスパターンが必要でも、沖縄なら1億円のビジネスパターンでも仕掛けられる。大きい企画にしようと思ったら万人受けにせざるを得ない。そうすると、ピントがぼけるわけですね」と述べる。
徹底して沖縄にこだわるのは、文化の復活・継承という理由もある。玉城氏は、「(日本に)復帰以降、本土色に染まって、気が付かない内に自分たちの文化を失っていった」とし、「マブヤーは子供のヒーローだけど、沖縄の文化をつい見過ごしてきた親の世代もマブヤーを観ることで、沖縄を再認識できるのではないか」と人気の理由を語った。
こうした狙いの下に行われているのが、番組内でウチナーグチ(沖縄方言)を解説なしで流すという試みだ。
「当然、子供はまったく分からないからお父さんに聞くわけです。お父さんも今方言が分からない人が結構多くて、お爺ちゃん、お婆ちゃんに聞くわけです。それで三世代交流が起こった。マブヤーを通して、もう一回地元の方言であるとか慣習を勉強し直す親がいるというのは、嬉しかったですね」(畠中氏)
マブヤーの制作に当たっては「沖縄版の勧善懲悪」が意識されたという。どちらが善でどちらが悪か分からなくなる。悪者でも決して殺さないし、懲らしめ過ぎない。そこに貫かれているのは、狭い島の中で生活するために育まれた独自の「許しの文化」だ。
こうした思想は基地問題に対する畠中氏の発言に集約されているかもしれない。
「沖縄といったら基地問題みたいな言い方をされるけれど、本当ですかと。基地なんかはもちろんない方が良い。でも、沖縄が目指すのは基地をなくすことではなく、世界から戦争をなくすことのはずです。皆さん共通して絶対に言えるのは、戦争はあるよりもない方が良いということ」
或いはこうした「緩い沖縄」が、基地や経済など日本の暗部を押しつけられる原因になっているという見方もあるだろう。しかし、玉城氏はこう述べる。
「物と物がぶつかると、反骨精神って言って痛いじゃないですか。僕はよく軟骨精神って言うんですが、骨と骨が当たると痛いけど、その間にぐすみち(軟骨)があれば、痛くないでしょう。マブヤーの中にこういうエキスが色々入っていると思う。許しの文化は見方を変えると、ええ加減に見えるかもしれないが、包容力の中の1つじゃないかと」
この懐の広さが沖縄やマブヤーの魅力なのかもしれない。
◇関連サイト
・琉神マブヤー - 公式サイト
http://www.mabuyer.com/
・[ニコニコ生放送]琉神マブヤー本編 上映会から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv49371569?ref=ser#01:45:22
(野吟りん)
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