「青少年ネット規制法」とも呼ばれる青少年インターネット環境整備法のあり方を、学者や教育関係者たちが議論する総務省の「青少年インターネットワーキンググループ(WG)」(主査:堀部政男・一橋大学名誉教授)。その第3回会合が2010年11月8日総務省で開かれた。

   同法は、青少年を暴力や出会い系、薬物といったネット上の「有害情報」から守ることを目的に、2009年4月に施行された。携帯電話のフィルタリングの規定が導入されたことで注目を集めたが、ICT技術の急速な発達に伴い、携帯電話やインターネット上のサービスも多様化している。同法の中には施行後3年以内の見直し規定も入っていることから、WGで議論が進められている。この日は、フィルタリング規制を強化すべきという教育関係者とそれに反対するインターネット事業者の意見が対立した。

   現行法では青少年(18歳未満)がインターネットを利用する際、「青少年有害情報」から守るため、フィルタリングをかけることになっているが、親の判断で解除できる。これに対しては、「フィリタリングは義務化すべき。保護者の判断で解除できるのでは弱すぎる」(竹内和雄・大阪府寝屋川市教委指導主事)といった意見や、「今の法律では抜け道が多い。不便であっても小学生はホワイトリスト方式(推奨サイトしかアクセスできない)のフィリタリングをすべき」(曽我邦彦・安心ネットづくり促進協議会副会長)といった、より厳しい規定を設けるべきだとの意見が出された。

■ 「フィルタリング義務化よりも学校での教育が重要」

   このような意見の背景には「子どもたちがインターネットを発端にした事件に巻き込まれないようにしたい」という教育関係者や保護者の素朴な不安があると思われる。さらに、小圷真司・日本PTA全国協議会環境対策委員会副委員長からは「そもそも社会人ではない未成年が、情報を自由に発信し、取得する権利を認めていいのか?」という声まで出ていた。

   ただ、この論理は「交通事故に遭わないために子どもを外出させない」というのと同じともいえる。立石聡明・インターネットプロバイダー協会副会長は「交通事故は起きているが、子どもを家から出さないという親はいない」と、小圷氏の主張に反論した。

   また、主婦連合会の木村たま代氏は「フィリタリングを義務化すると、学校と家庭で責任を押し付け合うことになる。学校での情報教育を放棄してしまうのではないか」と発言。東京都地域婦人団体連盟の長田三紀事務局次長も「保護者にはリテラシー力がない。だからこそ、『食育』や『交通安全』のように、学校で学ぶことで、保護者も子どもも同時に成長していけばいい」と述べ、学校での教育を重視すべきとの意見を表明していた。

   WGでは様々な意見が示されたが、これらの議論の前提となる「現在のフィリタリングの精度がどのレベルでなされているのか」といったイメージが、メンバーの間で共有されていないように感じられた。たとえば、フィリタリングといっても、モバゲーmixiGreeといった大手のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)は利用できている。また、最近ではフィリタリングサービスも多様化してきており、どのようなサイトが排除されるのかが分かりにくい。

   そのため、フィリタリングの技術的な側面に引きずられることなく、あくまでも「青少年のインターネット利用の原則はなにか?他の選択はどんなものがよいのか」(主査代理、藤川大祐・千葉大学教育学部教授)を考えていく必要があるのではないだろうか。

渋井哲也

渋井哲也ブログ:てっちゃんの生きづらさオンライン