projecta2.jpg  『若手アニメーター育成プロジェクト』が、新たな動きを見せた。このプロジェクトから生まれた4本の短編アニメが3月上旬に1週間限定で映画館上映され、好評を得たため、待望の「全国放送」が決定したのだ。そのほか、プロジェクト立ち上げ当初は予定になかった企画、さらには来年度に向けた準備もすでに始まっている。「アニメーションの未来をつくりたい」という想いから出発したこのプロジェクトは、果たしてどこまでいくのだろうか? 

 『若手アニメーター育成プロジェクト』とはその名の通り、実際にアニメ作品を作ることやトップアニメーターらから技能指導を受けることなどを通し、アニメ産業の"次世代を担う"若いアニメーターたちを育成することが目的だ。2010年に始まったばかりのこのプロジェクトの「今までとこれから」について、前回も取材した日本アニメーター・演出協会(JAniCA)の桶田大介プロジェクトマネージャーに、再び話を聞いた。

■ アニメには「観る前より少し元気になったり、楽しくなったりする力」がある

――3月5日から11日の劇場公開、お疲れさまでした。全国で1180人の観客動員を達成し、好評だったことから今回の全国放送も決定したということですが、公開を終えた今の気持ちをお聞かせください。

 ほっとした、と申し上げたかったのですが、不幸にも劇場公開の最終日に東日本大震災が起きてしまいました。アニメ業界にも少なからず、影響がありました。今は、被災された方々への哀悼の想いと、それぞれのお立場で今も頑張っておられる皆さまへの心からの敬意を表するのみです。

――作品をご覧になった方々からの反応はどのようなものでしたか?

 幸い、本当に多くの皆さまから望外に高い評価を頂戴しました。これも、プロジェクトの趣旨をよくご理解いただいた上、それ以上の結果を出してくださった参加4社の制作スタッフ、お一人お一人の頑張りの賜物です。関係者の皆さまにただただ感謝です。

――この事業は平成23年度も行われ、引きつづきJAniCAが実施することが決まったそうですね。

 ありがとうございます。初年度の皆さまが期待以上の結果を出して下さった後だけに、重責をひしひしと感じています。ヤマサキ代表、神村プロマネら、関係者の皆さまと協力し、引き続き全力で取り組んでまいります。 プロジェクトの内容・流れは、おおむね昨年と同じ予定です。

――劇場公開最終日の放映は東日本大震災で中止となり、毎日放送でのテレビ放送もスケジュール変更となりました。アニメ業界全体も震災による影響を少なからず受けているとのことですが、「今だからこそ」この事業に託したい希望などはありますか?

 震災のことなど想像だにせず制作された4作品ですが、改めて見直してみると、それぞれの作品の持つメッセージ、魅力は、今の状況にも通じると感じています。あるクリエイターさんは、「アニメ業界に多額の義援金を送る余裕はありません。でも、アニメは、観る前より少し元気になったり、楽しくなったりする力があります。僕たちは、そういうやり方で役立っていきたいと思います」と仰っていました。

 この度、初年度プロジェクトにご参加いただいたアセンション、テレコム・アニメーションフィルムP.A.WORKSおよびProductionI.G.の4社より、参加作品を震災復興に役立てたいとのお申し出がありました。具体的にはドワンゴのご協力を得て、「ニコニコ生放送を通じた募金の呼びかけ」および「チャリティを目的としたプロジェクト参加4作品のパッケージ販売」がされる予定です。 プロジェクト事務局としては、文化庁ともご相談の上、これに全面協力することと致しました。ただ今、関係者の皆さまに広くご協力のお願いをしているところです。皆さま、ぜひ応援して下さい。

――では、最後にニコニコユーザーに一言お願いします。

 皆さんのお陰で、昨年度のプロジェクトは無事、成功しました。しかし、これは終わりではなく、始まりに過ぎません。これから新しく参加されるスタッフの皆さま、創られる作品はもちろん、初年度の4作品もこれからが本番です。これからも皆さんのサポートを頼りにしています。よろしくお願いします。

 全国放送は「こどもの日」である5月5日BSジャパンにて昼12時より。プロジェクト参加4作品一挙放送にくわえ、声優・藤田咲さんがナビゲーターを務めるドキュメンタリーパートも流れるそうなのでファンは必見だ。また、ニコニコ生放送でも5月7日21時より配信される予定。こちらには、神谷浩史さん、森川智之さん、釘宮理恵さんほか、出演声優陣からのメッセージが寄せられることになっている。ニコニコ動画内にある予告編で各作品をチェックした上で、各企画のさらなる詳細発表を待とう。公式ウェブサイトで、最新情報が確認できる。

【関連サイト】
PROJECT A 公式ウェブサイト(テレビ放映情報ほか)

(古川仁美)

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