日弁連は6月24日、「18歳選挙権」に関連し、政治的中立性の確保を理由に高校教師らの授業運営を必要以上に制限しないよう求める意見書を、文部科学大臣や各都道府県などに送ったと発表した。規制が行き過ぎると、政治的論争のある問題を取り上げられなくなり、生徒の学習権が侵害される可能性があるなどとしている。

文科省は選挙権年齢の引き下げが決まった2015年、各都道県などに向け、高校などでの政治教育についての「新通知」を出した。この中では、具体的な政治的事象を題材にした主権者教育の推進がうたわれる一方、「指導に当たっては、教員は個人的な主義主張を述べることは避け、公正かつ中立な立場で生徒を指導すること」と書かれている。

日弁連も特定の見解の押し付けや、党派的な授業には反対の立場をとっている。危惧しているのは、通知が個人的な主義主張を述べることの「禁止」と拡大解釈され、教師の「教育の自由」が大きく制限されてしまうことだ。教師が萎縮して、政治的論争のある話題を取り上げなくなれば、生徒たちの政治に対する公正な批判力を培う機会が失われる可能性があるという。

この点について、日弁連の教育法制改正問題対策ワーキンググループの三坂彰彦事務局長は次のように説明した。

「生徒から『先生はどうなんですか』と聞かれて、『私の考えは言えません』という対応は、生徒と教師の人格的接触という観点でも好ましくないのではないか。たとえば、原子力発電について、生徒から賛成・反対の意見が出て、その流れの中で教師が根拠とともに自分の立場を明らかにするというのは、押し付けでない限りは一つの授業のあり方だろう」

意見書では、高校生らの政治的活動の制限に関して、表現の自由を十分に尊重して慎重に行うことなども求めている。

(弁護士ドットコムニュース)

高校の政治教育「行き過ぎた中立」で「教育の自由」の侵害を危惧…日弁連が意見書